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「天草ソナービール」を飲んで、天草を旅しよう(後編) 天草・島原の世界遺産を巡る旅へ

クラフトビールには、「地域の特産物を使って、おいしいビールが作りたい」「クラフトビールで街を盛り上げたい」という、ビール醸造家たちの熱い思いが込められています。

その地を訪れ、造り手を知ればビールはよりおいしくなります。

天草は、キリスト教が伝来し、南蛮文化が栄えた土地。隠れキリシタンの歴史を感じられる場所が多く残され、2018年には、天草にある「崎津集落」を含める「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されました。

前編では、熊本県天草市を訪れ、「天草ソナービール」の荒木さんに取材をさせていただきました。 今回の後編では、島原の世界遺産を巡る旅をご紹介します。

隠れキリシタンの歴史に触れ、世界遺産を巡る旅

天草キリシタン館

天草に行くには、熊本阿蘇空港から天草エアラインという飛行機に乗り換え、20分程で天草空港に到着します。

もしくは、熊本阿蘇空港からバスで2時間半かけ、「本渡バスセンター」という天草のバスの玄関口となるバスターミナルに到着します。

本渡バスセンターから車で10分ほどの距離に、「天草キリシタン館」があります。

天草市内にあるおすすめ観光スポットの一つ。天草・島原の乱についての歴史を分かりやすく学ぶことができます。

天草キリシタン館は高台にあって、天草の街並みが一望できる。入り口には、天草四郎の銅像が立ち、天を指しています。

200点ほどの展示物と、天草の歴史を「天草キリシタン史」「南蛮文化の伝来と天草・島原一揆、乱後の天草復興とキリシタン信仰」にゾーンが分かれ、丁寧に解説されています。

資料館の中には、「天草・島原の乱」で実際に使用されたと言われる陣中旗が展示され、そこには血痕のあとが、戦の生々しさを感じさせます。

天草キリシタン館
熊本県天草市船之尾町19-52(殉教公園内)
0969-22-3845

天草崎津集落

崎津集落は、本渡バスセンターから車で1時間弱。天草諸島の天草下島西部の漁村にあります。本渡バスセンターからの所要時間は、「町田中央」で乗り換えて約1時間半。

途中坂道が多く、天草が山の多い地形だということがよく分かります。また、天草崎津集落の中でも有名な景色が、神社の鳥居から見える教会の風景。

隠れキリシタン信仰を育んだ地の独特な空気を感じさせます。

ここは、2018年に世界遺産に登録された「天草の崎津集落」の風景。

最初に教会が建てられたのは禁教が解かれた後の1888年。その後、1934年(昭和9年)にフランス人宣教師のバルブ神父によって現在の建物に再建されました。

設計施工をしたのは、鉄川与助という大工の棟梁で、世界遺産に登録されている教会の多くが彼の手で建てられたものです。全国でも珍しく、教会の内部に畳が敷かれています。

ステンドグラスから漏れる光がとても優しく美しく、堂内は静かな時間が流れていました。

なお、教会のあった場所は、かつては庄屋の屋敷があった跡地で、ここでキリシタンを弾圧するための「絵踏み」が行われていたといわれています。

今はそんな厳しい歴史を感じさせない温かな漁村の風景。穏やかな海を感じさせる羊角湾のほとりに立っていることから「海の教会」と呼ばれています。

しばらくゆっくりと漁村を散歩していると、ちょうどお昼どきになりました。この日は、崎津教会から徒歩10分ほどの場所にある天草市総合文化施設・天然温泉「愛夢里」出張所のちゃんぽんへ。

ステンドグラスを使った店内がとても可愛らしく、魚介たっぷりのスープが濃厚で満足味わえる一品でした。ちゃんぽんには「日本三大ちゃんぽん」と呼ばれているちゃんぽんがあります。

そのうちの一つが「天草ちゃんぽん」。(残りは、長崎ちゃんぽんと戸畑ちゃんぽん)

天草に来たら、ぜひ天草ちゃんぽんを召し上がりください。

崎津教会
熊本県天草市河浦町崎津539
問い合わせ先:崎津集落ガイダンスセンター(ガイドあり)
0969-78-6000

高台に建つ白亜の教会、大江天主堂

崎津教会から車で15分ほどの場所に、もう一つ天草で外せない教会があります。それは、禁教令が解かれた後、天草で最も早く活動を開始した大江天主堂。

明治25年に南仏から赴任してきたガルニエ神父が、その私財を投じて建てられました。設計を担当したのは、崎津教会と同じく鉄川与助です。

後に「教会建築の父」と呼ばれるほどの多くの教会を設計した鉄川与助ですが、中でも大江天主堂は美しく、高台に建っているため、下から見上げると青い空に白い教会が映え、まるで地中海のような情景を感じさせます。

大江天主堂
熊本県天草市天草町大江1782
問い合わせ先:天草観光協会
0969-22-2243

天草で海の幸と温泉に癒される

次にご紹介する下田温泉は、大江天主堂からバスで約40分、「日本夕陽百選」にも選出された夕陽スポットとして人気を集める天草西海岸「サンセットライン」から少し入ったところにあります。

開湯は800年ほど前と言われ、「二羽の傷ついた白鷺が、傷を癒していたのを村人が見て開かれた」という伝説のある温泉。別名では白鷺温泉とも呼ばれています。

源泉掛け流し、トロトロの温泉に浸かると、歩き疲れた体の癒され、至福の時間。 温泉で体を少し休めた後、宿から歩いて15分ほどの海岸線に向かうと、夕陽が絶景の眺めで息をのむ美しさでした。

下田温泉近く、サンセットラインから見られる夕陽。

そして、その日の最後のお楽しみは何と言っても、新鮮な海の幸が味わえる魚づくしの夕食。

こちらの宿は魚屋直営のため、天草の西海岸でとれた新鮮な伊勢海老や季節の魚介類が、リーズナブルな金額で味わえます。

まさに、食卓の上にも絶景が!天草に訪れたらぜひ、新鮮なお魚をお楽しみください。

天草下田温泉旅館湯本の荘 夢ほたる
http://sanraizukankou.co.jp/yumehotaru/
熊本県天草市天草町下田北1366-1
0969-42-3311

船に乗って長崎へ

翌日は、下田温泉から鬼池港へ向かい、そこからフェリーに乗って長崎を目指しました。

現在、天草は熊本県の一部ですが、廃藩置県が行われる前までは、長崎県の一部でした。天草の鬼池港から長崎の口之津港までは、船で30分あれば渡れる距離にあります。

鬼池港、フェリーを待つ車の列。ここにも天草四郎の像が立ち、海の彼方を眺めています。

天草から船で長崎へ渡り、港から車で10分ほど行くと、「天草・島原の一揆」で戦場となった「原城跡」に辿り着きます。

「原城跡」は、崎津集落と同じく、2018年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された構成資産の一つ。

この地で、幕府軍12万人に対した農民など含めキリシタン信者たち約37,000人が全滅しました。全てが燃え尽きてしまったため、現在、原城跡には石垣跡しか見ることができません。

ただ、原城跡からは海の先に天草を見ることができます。島原と天草から志を同じくして集まった人たちが、この景色を見て最後まで戦い抜いた跡。発掘調査によって多くの人骨や、鉛で作った十字架などが発見されました。

キリスト教国である、スペインやポルトガルから援軍が来ると信じていた彼らは、海を見て希望をいだいていたような気がします。

結局、来ると信じていた援軍は来ることがなく、幕府軍に援軍したオランダ戦からの砲撃を受け、キリシタンたちは意気消沈し、それが原因で敗戦へ繋がったともいわれています。

原城跡のすぐ側にある原城温泉 真砂の部屋からは天草の奥から登る朝日が眺められます。

原城温泉 真砂
http://harajoumasago.jp/
長崎県南島原市南有馬町133
0957-85-3155

天草・島原の世界遺産の旅を終えて

天草で隠れキリシタンの歴史を知り、最後には「天草・島原の一揆」の戦場となった原城跡を見て、今回の旅は終わりました。

原城跡からはバスで島原に出て、そこから諫早(いさはや)線に乗って海沿いに諫早まで向かいます。

途中、見られる海と電車の駅の風景。思いがけない美しい景色を眺めつつ、長崎空港へ。

今回は、「天草ソナービール」と出会うため熊本県天草市に訪れ、「天草ソナービール」をつくる荒木さんからビールづくりの熱い思いを伺い(前編)、その後、天草・島原の世界遺産を巡る旅に出ました。

豊かな風土と醸造家の熱い思いによってつくられるクラフトビールの奥深い世界。

作る場所と人を知ると、ますますビールがおいしくなり、家でビールを飲みながらも旅する気分を味わえるような気がします。

また、次なるクラフトビールを求め、風土と醸造所の個性が形づくる、おいしいビールを知る旅を続けます。

取材・文 / さとう 未知子

*記事に掲載されている内容は、インタビュー取材時点のものとなります。