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「天草ソナービール」を飲んで、天草を旅しよう(前編)天草の魅力が詰まったクラフトビールができました

クラフトビールには、「地域の特産物を使って、おいしいビールが作りたい」「クラフトビールで街を盛り上げたい」という、ビール醸造家たちの熱い思いが込められています。

クラフトビールを知れば、その土地の風土と人を知ることができます。

同じビアスタイルでも、作る場所と人が違えば全く違う味ができるのがビールの面白い所。造り手を知れば、もっとビールはおいしくなります。

風土と醸造所の個性が形づくる、おいしいビールを知る旅に出ましょう。

日本のホップ栽培、最西端の場所「天草」へ

熊本県の南西部に天草諸島という地域があります。北は有明海、東・南東部は八千代海、西・南西は東シナ海に囲まれた120の島々からなる諸島です。

海の幸・山の幸が美味しく、キリスト教伝来の南蛮文化やキリシタンの信仰が今なお街に残る独特の島文化を今に伝える場所です。

そして、日本で最西端のホップ栽培の地が、ここ天草。2020年に荒木真也さんが自社でホップ栽培をするビール醸造所を開きました。

今回は、「天草ソナービール」の醸造所にお伺いして荒木さんにお話を伺い(前編)、天草の歴史と風土を感じる旅に出ました(後編)。

ソナービールに到着、早朝ビールで乾杯!

荒木さんは熊本市内で美容院を経営しながら、ホップを自社で栽培、ビール醸造を行っています。そのため、作業は早朝か深夜に行い、2時間半をかけてご自身の経営する美容院へ通う日々。

今回の取材も、始まったのは早朝の6時。まだ朝の薄暗い時間に天草市五和町鬼池にあるソナービールの醸造所に到着しました。

取材が始まると、まずは今まさに作りたての熊本産マンゴーを使ったビールをグラスになみなみと注いでいただきました。

グラスから香り立つマンゴーの匂い。

「おいしい!!!」思わず声をあげました。これは、フルーツそのままの味わいです。

「もう、ジュースですよね」と笑って話す荒木さん。

マンゴーの味付けがしてあるビールではなく、マンゴーがビール化したような味わいです。

ホップを4種類、麦芽を6種類使って味付けられ、度数は6%。

完熟マンゴーの濃厚でまろやかなコク、そしてマンゴーピューレが口当たり優しく、ビールが苦手な人にも楽しめます。

豊かな水源と土壌に恵まれる熊本県はフルーツ王国で、晩白柚やマンゴー、ぶどう、梨、スイカなど季節で楽しめる果物が豊富な場所だといいます。

まさに熊本の特産物を使い、ここでしか作れない贅沢な味わいを作り出しています。乾杯をしながらも、荒木さんは作業の手を休めずにお話をしてくださいました。

「週に4〜5は掃除です。」と、荒木さんはいいます。ビールの味と品質を保つには、掃除を徹底的にすることが欠かせません。

また、おいしいビールを作るには、味を作るまでの全ての行程で数値を書き出す「記帳」の作業が大事な仕事だといいます。

ビールの味をつくる作業は「理科の実験」と一緒だといいます。配分・時間などによる味の変化の実験を繰り返しながら、おいしいビールをつくりだしていきます。

荒木さんは、宮崎にある日南麦酒でビール醸造の修行を積みました。ビール醸造を始める人は、それぞれビール醸造所で修行を積み、そのノウハウを学んだ上で自分の醸造所をつくるのが一般的なスタイルです。

ただ、そこで修行を積んだからといって全く同じものが作れるかというと、そうではないといいます。

「ビール醸造は技術を学んだといっても同じものが作れるわけではないんです。それがビール作りの面白いところで、作る場所によって全く違う味わいができる。ここでしか作れないものを作ることができます。」

毎日過密スケジュールをこなしながら、ビールづくりに真剣に向き合う姿からは、何よりも荒木さんがビールを楽しんでいることが伝わりました。

天草でホップ栽培を始める

荒木さんは東京都の原宿で14年間、美容師として仕事をしていました。それが、美容院のお客様からのご紹介で、ベルギービールと出会い、そのおいしさに魅せられます。

その後、地元の天草でもビールが作れるのではないかという思いでUターン。ビールづくりを始めました。

現在、ビール醸造の多くはドイツ・チェコなど海外からの輸入ホップが使用されています。

ホップは寒冷な土地を好むといわれており、日本国内でも、北海道・岩手、秋田などの東北地方で栽培されています。

近年クラフトビールの人気の高まりを受け、北海道・東北地方だけでなく、京都や宮崎などでもビール醸造家が栽培するようなりました。

そこに目をつけた荒木さんは、「宮崎でも栽培できるなら天草でもつくれるかもしれない」と思うようになったといいます。

元々、実家の畑を何か有効活用したいなという思いがあり、ビールを無農薬のホップからつくることに挑戦し、栽培を始めました。

現在17種類のホップを作り、どの種類が天草の気候に適しているのか、土に合うのかを模索しているといいます。

震災支援への思い

Cp Love for JAPANの活動で、株式会社ランドウェルさんより支援していただいた災害用のテント500張を天草市長にお届けした荒木さん。

荒木さんは、美容師、ビール醸造家のほかに、「LOVE FOR NIPPON」という震災の被災者支援活動を行う団体の熊本代表という、もう1つの顔もあります。

東京在住の頃から、東日本大震災の被災地訪問を続けられており、今でも月に一度、ボランティアで福島に行き、子供達の髪を切る活動を続けています。

天草ソナービールの初出店は、「LOVE FOR NIPPON」代表であるキャンドルジュンさんが2004年から行なっている、新潟中越地震の復興支援フェスティバル「Song of the Earth」に決めていました。

熊本地震の際、東北の方々から頂いた支援のお返しができると、荒木さんも出店を楽しみにしていたイベントでしたが、残念ながらコロナウィルスの影響で中止になってしまいました。

売上金額の一部を寄付する目的で、昨年台風19号の被害で売れなくなってしまった長野のりんご農家さんのりんごを引き取り、ビールを作る予定だったといいます。

イベントが中止になってしまったので、リンゴは加工して冷凍保存してあり、次回、今年の5月に行われる、横浜みなとみらいのGreen room Festivalで初出店することが決定しているそうです。

これからのAMAKUSA SONAR BEER

現在は、天草市と連携をして、高校生と一緒に使われていない農地を利用し、ホップの栽培を始めることが決まっています。

クラフトビールづくりに関わることで、子供達は、栽培から加工、そしてビールの流通まで、6次産業の全てを学ぶことができるといいます。

過疎化が進む地元を、自分の力で元気にしたいという思いで始めたクラフトビールづくりは、未来を担う子供に何ができるかということまで考えられていました。

今後は、醸造所を移設し、畑を見ながらその場でつくりたてのビールが飲めるタップルームを作ったり、ビールを飲みにくる観光客のために宿泊施設を作ったりする夢があるそうです。

「AMAKUSA SONAR BEERを通して、天草をもっと知ってもらい、来てもらい、感じてもらいたい。そんな役割ができたら良いなと考えています。」と荒木さんは語ります。

今回、天草で荒木さんに取材をさせていただき、クラフトビールが地域を変えることもあるかもしれないと感じました。

地域を盛り上げたいと、信念を持って一人が始めたことは、大きな力を持って沢山の人を動かす力になる、そんな未来が見えるようでとても素敵な時間を過ごしました。

帰りのタクシーで迎えに来てくれた運転手さんに荒木さんのことをお話しすると、とても嬉しそうにしてらっしゃいました。

「ここでビールを作っている人がいるなんて知らなかったよ。教えてくれてありがとう。若い人が頑張ろうとしているのを応援したいし、ここに人が集まって来てくれたら嬉しいよね。」

作っている人の顔が見える、クラフトビール 。天草の特産物と、荒木さんの情熱がたっぷりと入った世界にたった1つのビール。

ぜひ、天草の、土と水と太陽と人で出来たここにしかない味をお楽しみください。

それでは続いて、天草の歴史と風土を知る旅へ出かけましょう(後編へ)。

取材・文 / さとう 未知子

*記事に掲載されている内容は、インタビュー取材時点のものとなります。